そもそも鍼灸保険とは?
鍼灸保険について、まず説明していきます。
- 医師の同意があり、慢性的な痛みを伴う特定の疾患に対して、療養費として一部負担金(1~3割)で施術を受けられる制度があります
- 保険を使っての施術を受けるには、医師の「同意書」が必須です。
- 支払い方法は、一度患者が全額を払って保険者に請求する償還払いと患者が一部負担金を払って施術者が残りを請求する受領委任払いがあります。
鍼灸保険を使わない理由1:適応疾患でないと使えない
鍼灸保険が適応となる疾患は以下の通りです。
- 神経痛(例:坐骨神経痛、肋間神経痛)
- リウマチ(慢性的な関節炎など)
- 頚腕症候群(首〜肩・腕の慢性的な痛み・しびれ)
- 五十肩(肩関節周囲炎)
- 腰痛症(慢性的で、急性のものではない)
- 頚椎捻挫後遺症(むちうち等)
これ以外に関しては保険は適応となりません。
つまり、肩こりや頭痛、ぎっくり腰などの急性症状に関しては適応外となります。
この適応範囲の狭さが、私が鍼灸保険を使わない理由の1つ目になります。
鍼灸を受けにくる患者さまはいろいろな症状を抱えていて、お悩みも様々です。
「保険適応なのか適応外なのか」
これはとても大きい。
鍼灸保険を使わない理由2:経営が成り立たないから››
鍼灸保険の単価は安いです。
↓厚労省のサイトに載っていたものですが、はりきゅうの療養費に関する文書です。

施術所と訪問とで単価は違いますが、訪問に関しては「件数をやればやるほど単価が安くなる」という仕組みになっているため、
- 数が少ないと売り上げとして成り立たない
- 数をやったら単価が下がるため売り上げを立てるにはもっと数をやらないと無理
という構造になっていて、個人でやるには条件が悪すぎます。
1人1人をしっかり見ようと思えば数はこなせない。
売り上げのために数をこなそうとすると1人にかけられる時間や手間は少なくなる。
私の考えとしては、テキトーに施術して数をこなすだけの施術に意味などありません。
もちろん保険にした方が患者さまの負担は少なくて済みますが、
私としては「安くてテキトーな施術ならしない方がマシ」だとすら思っています。
お互い貴重な時間を使わなくて済むからです。
数をこなすだけの施術は、施術者の負担も増大するし、それが事業の継続性も危うくします。
移動距離にもよりますが、訪問だと頑張っても1日に5〜6件が限界でしょう。
それで単価が2000〜3000円では正直割に合いません。
なので私としては「患者さまに相応の負担をしていただいてしっかり施術もする」というスタイルでやっています。
鍼灸保険を使わない理由3:時間的・金銭的コストが増えるから
3つ目の理由は、時間的・経済的コストが大きいからです。
鍼灸保険を使うには、ドクターの同意書が必須だという話をしました。
ですが、全てのドクターが同意書を書いてくれるわけではありません。
むしろほとんどのドクターが書いてくれないといった方が良いかもしれません。
なので、鍼灸保険をやろうと思ったらまずドクターを探すことから始めなくてはなりません。
本来なら患者さま自身に探してもらうのですが、今までの経験上、こちらで探して紹介するというケースも多いです。
もしドクターが見つかったら、そこに患者さまご自身で行ってもらって診察を受け、書類を書いてもらって持ってきてもらい、そこからようやくスタートとなります。
そして鍼灸保険が始まったら、毎月「保険の請求業務」があります。
請求をするには、基本的にはレセコンという専用のソフトの導入が必須です。
手計算でもやったことがありますが、これまた大変💦
人数が増えるほど請求にかかる手間も費用も増え、自分の時間はなくなります。
これが時間的コストです。
次に金銭的コストの話をします。
レセコンを導入するには数十万円の費用がかかります。
そして毎月の保守管理費用などが毎月数万円かかります。
件数が少ないと、これだけで請求額のほとんどが吹っ飛び、もはや何のためにやっているのか分からなくなります。
ただ、鍼灸保険としてやっている以上、請求をやらないと療養費が入ってきません。
しかも請求してもすぐには入ってきません。
ひどいところだと6ヶ月近く入金されない場合もあります。
そのため多くの施術所・施術者は団体に所属し、一時的に療養費を立て替えてもらうのです。
しかしその団体に所属するにも費用がかかるため、さらに費用がかさみます。
そうなるとますます件数を増やさなくてはならなくなり、ジリ貧に陥ります。
鍼灸保険には、こういったリスクもある。
でも一度始めてしまったら、簡単にはやめられない。
そこまでして鍼灸保険をやる理由があるかというと、全くない訳です。
結論:自分のためでもあり、患者さまのためでもある
以上が私が鍼灸保険をやらない理由です。
簡単にいうと『手間とコストに見合わないから』という事になります。
「患者さまのために」という善意で始めるのですが、結局数をこなすために患者さまを雑に扱い、おざなりな対応をする事になってしまう訳です。
これでは本末転倒。
まったく患者さまのためになっていません。
そして自分も疲弊してしまったら、本当に何のために始めたのか分からなくなってしまう。
鍼灸保険という制度自体は良い制度だと思いますが、それだけでやっていけるような設計になっていません。
数年ごとに改定されてはいますが、基本的なところは変わっていません。
個人の施術者でも、鍼灸保険だけで食べていけるような制度になってくれたらとは思いますが、なかなか難しいのかもしれません💦


コメント