鍼灸が出来る!
国家試験の合格通知が来てすぐに、本院から小規模な分院へ異動しました。
学生アルバイトの自分の仕事は、
- 掃除や洗濯
- 患者さまが使うスリッパを並べる
- 院から無料で提供しているミネラルウォーターを患者さまのボトルに入れる
- 先輩が飲むお茶を準備する
- 患者さまをベッドにご案内して低周波をセットする
などの施術以外の雑用が仕事の大半でした。
雑用も大事な仕事であり、下っ端の自分には必要な仕事だと思ってやっていました。
ですが、資格を取ったら施術ができる環境に行かなくてはならないと思っていました。
本院はスタッフの人数が多く、当時在籍していたのは15人ほどだったと思います。
鍼灸師も自分を含めて6〜7人いて、自分の序列は最下位。
例え自分が資格を取っても鍼を打てる環境ではありませんでした。
なので思い切って退職して別の職場に行こうと思っていました。
それを社長に話したところ、
「鍼灸師が退職する分院があるから、そこに行ってみてはどうか」という話を頂きました。
私としては鍼灸ができる環境なら文句無かったので、二つ返事で了承し移動することになりました。
入社した動機がそうであったように、私は鍼灸ができる環境が欲しかったのです。
『背中って広い…』
異動になったのは足立区の院。
本院と比べるとベッドの数もスタッフの数も3分の1くらい。
鍼灸師は院長と私の2人。
院長は鍼はほとんどやらないとのことで、実質私が1人で担当することになりそうでした。
その後2〜3週間の間で前任者から患者さまの引き継ぎを行い、いよいよ鍼灸師としての私のキャリアがスタートしました。
その初日。
資格を取ってから10年以上になりますが、初めて鍼を打った時のことは今でもはっきり覚えています。
患者さまは小柄な男性。主訴は腰痛。
鍼の保険を使って週に何度も鍼を受けに来る方でした。
今思えば本当によくある慢性の症状ですが、当時の私に取っては人生初の鍼治療です。
「初めてなのでよろしくお願いします」なんて言ったら患者さまの方も不安になるのでそんな事を言うわけにもいかず、ドキドキしながら臨みました。
今でもはっきり覚えてるのは、
「背中ってこんなに広いんだ…」ということ。
「こんなに広大な背中のどこに鍼をすればいいんだ?」と本気で思いました。
直感的に感じたのは、「学校で習ったことは役に立たない」ということ。
少なくとも私が行っていた専門学校では実践に役立つ実技はやっていませんでした。
今振り返れば当たり前ですが、専門学校は「国家試験に合格するための学校」であって「実践で使える技術を教える場ではない」ということをこの時に思い知りました。
でも、今更そんなこと言っても仕方ない。
やるのは私しかいない。
自分で何とかするしかない。
とりあえず前任者から教わった場所に鍼をして、無事に終了。
無事にというか「無難に切り上げた」という方が表現としては正しいかもしれません。
終わった時、汗だくでした。
その時私は思いました。
「こんなんじゃダメだ…!」
そこから「実践で使える技術」を身につけるために勉強をしようと決心しました。
必死に勉強した
とりあえず前任者がやっていた鍼の方法を引き継ぎながら、毎日の業務を行う傍らで猛勉強を始めました。
初めての鍼の時に「自分なりの鍼のやり方を確立しなくてはならない」と痛感したからです。
とはいえ、そもそものセオリーが分かっていない自分には前任者のやり方を引き継ぐしかありませんでした。
前任者のやり方を踏襲しながらも、私は
「もっと自分の技術・知識を磨かないと」
「学校の知識と現場の臨床の力は別物」
「目の前にいるこの方にもっと良い状態になってもらうためには、どうすればいいのか?」
と考えていました。
いろんな本を読み漁って、様々な鍼のやり方を勉強しました。
得た知識を使って、まずは自分や自分の家族で練習しました笑
そして良い感触が得られたら、今度は院のスタッフや院長に受けてもらってフィードバックをもらいました。
こういう腰痛だったらこう。
首をこう動かして痛い時はここ。
そんなパターンをいくつも試行錯誤し、そうこうして練り上げたものを、患者さまにも少しずつ使っていきました。
そしてだんだんと自分なりのスタイルを確立していきました。


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